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次回学術集会

「第26回いしかわ金沢大会」

第26回いしかわ金沢大会

↑リーフレット (ダウンロード用) (12.25更新)

会期:2020年11月28日~29日
会場:金沢歌劇座ほか
大会ホームページ

次々回学術集会

「第27回かながわ大会(仮称)」

会期:2021年12月4~5日
会場:パシフィコ横浜

(1)子どもの災害時の初期反応

ア.災害による心理的負担と反応

災害時の子どもたちは、①心の傷(心的トラウマ)、②喪失(身近な人や家や繋がりなどを失った体験による)、③災害後の社会・生活上のストレスという心理的負担をうけます。そして、その心理的負担に対する反応は、被災するまでの過去の心の傷になる体験の有無や、災害によって受けた被害の質や大きさ、災害時の人の死の目撃の有無等によって異なります。

家族や友達などの身近な人が亡くなったり重いけがをしたり、自分の家や通っている学校が破壊されると、子どもにとって大変な体験となり、強い反応を示す場合もあります。
また、子どもによっては、実際に体験していないことをあたかも体験したかのように感じてしまうことがあります。心理的に混乱している時には、誰かから聞いたことや報道で見た映像などが、自分の本当の体験と混同され、それによって反応が強くなる時もあります。

イ.年齢による相違

子どもの反応は年齢によって異なる面があります。例えば、6歳の子どもの場合には、学校に行きたくないという形で不安を表すこともありますし、思春期の子どもの場合は、何もなかったかのようにふるまう一方、周囲と言い争いが絶えなくなったり、成績が落ちることもあります。以下には一般的な反応を挙げますが、その表現の形は年齢によってことなることを意識してください。

ウ.災害からの経過による反応の変化

災害からの経過時間によっても反応は変化していきます。一般的に、一番最初は、茫然として麻痺した状態になったり、強い不安の為にじっとしていられず、ドキドキしたり息切れしたりという反応となります。この時期は死ぬのではないか、見捨てられるのではないかという現実的な不安が強い時期です。その後、興奮してややハイテンションになったり、感情の起伏が激しくなる時期がある子どももいます。しかし、そのような子どもでも、暫くすると、何も語らなくなって落ち込んだり、活動が下がる場合も多くなります。このように、経過と共に変化していくのもよくみられることです。

エ.子どもに見られることの多い反応

初期の子どもに現れやすいストレス反応は以下の通りです(児童青年精神医学会災害対策委員会編を一部改編)。これらは誰にでも起きておかしくない反応です。後に述べる対応を行い、安心させるようにして様子を見ましょう。睡眠の不安定さなどの反応は比較的長期に見られることが知られています。ただし、反応が強すぎて苦痛があまりに強い時や1か月以上たっても改善傾向が見られない時には心理士等に相談しましょう。

からだの反応

  • 食欲がなくなる。あるいは食べ過ぎる。
  • 寝つきが悪くなる。何度も目を覚ます。
  • いやな夢を見る。夜泣きをする。
  • 暗くして寝ることを嫌がる。
  • 何度もトイレに行く。おねしょをする。
  • 吐き気や腹痛、下痢、めまい、頭痛、息苦しさなどの症状を訴える。
  • 喘息やアトピーなどのアレルギー症状が強まる。
  • 風邪を引きやすくなる。

感情・情緒の反応

  • イライラする。機嫌が悪い。
  • 急に素直になる。
  • 一人になること、見知らぬ場所、暗い所や狭い所をこわがる。
  • 少しの刺激(小さい物音、呼びかけなど)にもびっくりする。
  • 突然興奮したり、パニック状態になる。
  • 現実にないことを言い出す。
  • 落ち込む。表情が乏しくなる。 ぼーっとしている。

行動・注意の反応

  • 赤ちゃんがえり(お漏らし・指しゃぶり・これまで話せたことばが話せないなど)。
  • 甘えが強くなる。
  • わがままを言う。ぐずぐず言う。
  • 今までできていたことも出来なくなる(食べさせてほしがる トイレへ一人で行けない)。
  • 大人が見えないと泣きわめく。
  • そわそわして落ち着きがなくなる。
  • 反抗的だったり、乱暴になる。
  • 話をしなくなる。話しかけられることを嫌がる。
  • 遊びや勉強に集中できなくなる。
  • 集団活動に適応できなくなる。

(2)発達障害の子どもにみられる反応

施設には多くの発達障害のお子さんが入所していることと思います。

発達障害のお子さんにおいても、前述のような反応が認められますが、その他にも発達障害の子ども特有の症状が認められることがあります。基本的には、それまでの発達障害の症状が強く出現します。

① 多動・衝動性の増加

警戒心のたかまりから、落ち着きのない行動が目立ちます。

② 不注意症状の増加

ぼーっとしてしまう時間が増加します。

③ 感覚過敏性の増加

音や接触に対する過敏さが増します。

④ ひとりごとの増加

自閉傾向のあるお子さんは、ひとりごとが増えます。

⑤ こだわり・常同行動の増加

小さいころにやっていたこだわりや、行動のクセを再び始めてしまうことがあります。

⑥ パニックの増加

精神的に余裕がないために、ちょっとした刺激でパニックになってしまいます。

⑦ 現実にはない話しの出現

通常あり得ない想像上の話をし始めたりすることがあります。

(3)社会的養護における子どもに特徴的な反応

上記のような一般的な子どもの反応は良く知られています。しかし、社会的養護という場では、こんな時こそ信頼すべき大人にすがりたいはずなのに、自分を守ってもらえる大人に対する信頼感が少ない子どもが多いですし、見捨てられるかもしれないという不安も強いものです。上記に加えて、起きる可能性のある社会的養護のお子さんの反応を考えてみましょう。

ア.何事もなかったかのようにふるまう

家庭にいるお子さんは、自分を守ってくれることを信じている親から離れられなくなったり、赤ちゃん返りをすることが多いものです。しかし、守ってもらった体験が少ないお子さんたちは、人を信じられないために、自分ひとりで耐えようとするかもしれません。また、何事もなかったかのようにふるまうことも少なくありません。しかし、確実に心理的混乱は起きています。注意深く見守りましょう。また、ケアワーカーから離れなくなったり、赤ちゃん返りが少しでもみられる時には、その反応を大切にしましょう。

イ.全く違った人になったかのような反応をしたり、混乱する

感情や行動が突然くるっと変わってしまうなど、まとまりのなさが著明になることがあります。さっきのA子ちゃんと今のA子ちゃんが同じなの?と思えるような時です。また、「やりたい、やりたくない」と物事を決められなくなってパニックになることもあります。それが激しくなると、混乱した状態になったり、極端な赤ちゃん返りが出現したりします。そのような時には早めに心理士などの専門家に相談しましょう。

ウ.苛立ちや怒りの増加

もともと、家族と一緒にいられないことに対する怒りを心の中にしまっていた子ども達の怒りやいら立ちが増加したり爆発したりすることもあります。また、もともと感情の調節が苦手な子ども達は、自分の苛立ちを押さえられなくなりがちです。むやみに叱るのではなく、あなたの気持はわかること、しかし、他の子どもを傷つけることは許されないことを話しましょう。

エ.過去の怖かった体験(虐待や事故など)を思い出したり、フラッシュバックとなる

社会的養護にいるお子さんの中には、過去に怖い体験をしてトラウマを受けている子どもが少なくありません。そのようなお子さんの中には、忘れていたことを思い出して急に不安になったり、その時に戻ってしまったかのような感覚になって強い不安を感じることもあります。「昔は怖かったね、でも今は守るよ」というメッセージを伝え続けましょう。

オ.大人びた振る舞いをしたり、支配的になる

大人を信頼して頼ることが出来ない子どもの中には、危機状態になった時に、自分が大人になったような振る舞いをしたり、周囲に対して支配的になることがあります。一つの反応として捉えましょう。

カ.睡眠や食事への影響

眠れない、食欲のムラが激しくなるなど、睡眠や食事への影響が出てくる危険が、家庭で過ごしているお子さんに比べて大きいと考えられます。もともと、自分を調節することが苦手なお子さんが多いので、ストレス下ではリズムを崩しやすいことが影響するでしょう。安心感をたかめることで対処しましょう。

(4)中長期的反応

一般的には、1か月以上たつと、初期の反応が徐々に改善していきます。しかし、一部の症状、特に子どもでは睡眠の症状などが長期に存在することが知られています。

中には症状が改善してこなかったり、新たに症状が出現することがあります。それが子どもや周囲にとって非常に苦痛になるときには治療が必要です。比較的長期に見られる困難を伴う反応は、外傷後ストレス障害(PTSD)とうつ状態です。以下にその症状を記載します。当てはまると考えられる時や、その他の症状でも援助が必要だと思う時には専門家の支援を受けましょう。

ア.外傷後ストレス障害

強い心理的なダメージをおうことで、以下のような心的トラウマ反応が生じた状態を「外傷後ストレス障害」とよびます。

① 怖かった体験を心理的に再体験する 

② 怖かった体験を避ける、感情を麻痺させる

③ 不安と覚醒が高まる

 

① 怖かった体験を心理的に再体験する

怖かった体験が、思い出したくないのに思い出されたり、夢の中に出てくる等の体験を再体験と呼びます。恐ろしい体験を思い出させる刺激(災害の場面で見間きしたような物、音、臭いなど)によって混乱してしまい、現在の自分から意識が離れて、あたかも今被災しているかのような感覚になってしまうことをフラッシュバックといい、これも再体験の一つです。幼い子どもは、典型的な症状を表すことは少ないですが、突然何かを怖がって泣き叫んだりするなどの様子がみられることはあります。また、子どもの場合、災害に関連する遊びを没頭して繰り返すこともあります。

② 外傷体験を考えることを回避する

思いもよらず頭に浮かんできてしまう恐ろしい体験の記憶は、子どもに強い苦痛を与えるため、子どもはできるだけ外傷体験を思い出さないようにしようと「回避」します。具体的には以下のようなことが起きてきます。

  • ケアワーカーなどの大人と話さなくなる
  • 友達と話さない
  • 災害にまつわる話しや行事を避けようとする
  • 以前のことを覚えていないという
  • 感情を表現しなくなる
③ 不安と覚醒が高まる

「いつまた災害がやってくるのか?」という考えがぬぐいきれず、不安感が高まると同時に、緊張状態が続きます。

  • 集中困難
  • 寝つかれない、夜起きる、夜泣きするなどの睡眠障害
  • ケアワーカーから離れられない分離困難
  • ちょっとした刺激にびくっとする過敏さと身体が固まるような過度の警戒
  • イライラ感の持続や怒りやすくなる
イ.「うつ」状態

災害にあった子どもはしばらくした後、うつ状態となることがあります。軽いうつ状態が来ることはある意味で当然の反応です。しかし、それが子どもの生活に影響する時には対応が必要です。子どもの「うつ」は大人と異なり、イライラしたり、興奮したり、怒りやすくなったりすることが多いので、気付かれないこともありますが、注意が必要です。特に、年齢の高い子どもではうつ状態から非行に至ることもありますので、行動の問題があった時に、背景に災害後の反応としてのうつ状態が存在する可能性を考えましょう

① うつ感情

うつうつとした感情が続き、笑顔が少なくなります

② 興味の減少

以前楽しめていたことが楽しめなくなります。例えば、野球が好きだった子どもが野球を見ることもしなくなります。

③ エネルギーの低下

以前に比べて元気が亡くなります。

④ 無力感、無価値感、希望を失う

自分には何もできない、生きている価値がない、自分が悪い、未来は信じられないなどの気持になります。重症になると、死にたいと考えることもあります。

⑤ 苛立ちや怒り

常にイライラしたり、突然怒ったりします

⑥ 引きこもり

何もする気力がなくなって引きこもることもあります。

⑦ 集中力や考える力の低下

物事に集中できなくなり、じっくり考える能力が低下します。

⑧ 睡眠や食欲への影響

不眠になったり寝過ぎたり、食欲が落ちたり過食になったりします。

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