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学術集会

次回学術集会

「第27回かながわ大会」

第27回かながわ大会

↑リーフレット (ダウンロード用) (12.14更新)

会期:2021年12月4日(土)~5日(日)ハイブリッド開催
会場:パシフィコ横浜ノース
大会長:清水直樹
実行委員長:川﨑二三彦
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次々回学術集会

「第28回ふくおか大会(仮称)」

会期:2022年12月10日(土)~11日(日)
会場:福岡国際会議場

学術集会

「第26回いしかわ金沢
大会」(終了)

会期:2020年11月28日~29日
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(1)日常活動をできるだけ早期に再開する

災害の直後の混乱が収まり、ライフラインが回復した段階では、日常活動の回復が子どもたちのケアの重要な要素となります。阪神淡路大震災では、しばらくは休みになっていた学校の再開が、子どもたちにとって「復興」に向けた重要な意味を持ちました。こうした「日常」の回復は、心の回復にとって重要な働きをします。

施設で生活する子どもは集団生活であるため、一般家庭の子どもに比べて日常生活が、日課などのルールで明確に決められていることが多いと思います。こうした明確に決められた生活は、災害後の復興段階では、子どもの生活の安定化と、それにともなう精神的な安定化にとってプラスになるという利点があります。集団生活のメリットを生かしてできるだけ早い段階で、日常活動が再開できるように心がけましょう。

(2)復興のための活動に子どもの参加を促す

災害などの衝撃的な体験は人に強い無力感や絶望感を覚えさせるものです。このような無力感や絶望感に打ちひしがれたとき、人は、「もうすべてが終わりだ、自分にはどうすることもできない」と思ってしまいます。しかし、どのような絶望的な状況にあっても、人には、なにがしかの力が残されているものです。阪神淡路大震災後の避難所で、家が全壊してしまったあるお婆さんは、医師や看護師がお婆さんの健康を気遣って訪れるたびに、お茶を入れて供していました。このお婆さんは、「こんな状況でもお茶を提供できる」ということに喜びを感じていたのだそうです。このように、人は、残された力を感じることできたとき、自信の回復への一歩を踏み出せるのでしょう。

これは子どもであっても同じことです。施設の復旧や地域の復興に向けた何らかの活動に子どもが参加できることは、それがどんなに小さなことであっても、子どもの自信の回復につながるのだということを認識しましょう。「子どもにさせるよりは大人がやってしまったほうが早い」と思うことも少なくないかもしれませんが、「早さ」を犠牲にしても、子どものためになることを優先すべき場合がすくなくないはずです。

施設で生活している子どもは、その成育歴のために、一般家庭の子どもよりも無力感や絶望感が強い可能性があります。そういった子どもをケアする施設では、災害後の中長期的支援において、子どもの無力感をより丁寧に扱い、自信の回復に向けた復興活動により積極的に子どもを巻き込むよう考えるべきでしょう。

(3)子どもの表現を促進する

これは、前項の「子どもの自発的な表現は遮らないで受け止めてあげること」のところで述べたことと基本的には同じことで、子どもが表現してくる限り、それを受け止めて丁寧に扱っていく必要があります。

災害の直後には恐怖や不安をほとんど表現しなかった子どもが、ライフラインの回復などにともなって生活がある程度安定してきた段階で、これまで表現しなかった不安や恐怖を表現したり、あるいは情緒的に不安定な状態が顕著になることがあります。これは、環境が不安定な状態にあった段階では抑え込まれていた感情や情緒が、環境が安定してくることで子どもの心の表面に浮かびあがってきたと考えることができます。こうした場合には、「ようやく、さまざまな気持ちを表現できるまでに回復した」と捉えて、前項に述べたような丁寧な対応を心掛けてください。

(4)子どもの生活環境の変化を出来る限り少なくする

前項でも述べたように、施設などの社会的養護で生活する子どもたちは、一般家庭の子どもたちに比べて、基本的な安心感が欠如していることが多いものです。そのため、彼らにとっては、一般の子どもにとっては何でもないような生活上の些細な変化であっても、精神的な不安定さの要因になってしまう可能性があります。

災害は、施設生活に大きな変化をもたらすことは避けられないでしょう。ですから、たとえば子どもの生活単位の集団はできる限り変化させないことや、担当のケアワーカーの交代はできる限り避けるなど、可能な範囲で生活上の変化を避けるための工夫が必要となります。

(5)グループを活用する

施設では子どもがグループで生活しています。グループでの生活は、災害後のケアにとって、ある意味、メリットになる可能性があります。それは、子どもたちにとって「仲間意識」が生じ、「グループによって支えられる安心感」が得られる可能性があるためです。そのため、こうした子どものグループを適切に活用することが、災害後の中長期的なケアにとっては有効だと言えます。

たとえば、グループで、災害時の何を感じたか、何を考えたかを話し合い、共有することで、子ども間の連帯感が強化され、仲間意識を高めてくれるのに役立つ可能性があります。

また、前項で述べた地震や津波の発生のメカニズムを理解するための知識の提供をグループで行うことが有効に作用することもあります。こうした知識の提供と、災害時の個人的な体験を表現し共有するためのグループを「心理教育グループ」と言いますが、集団生活という施設生活の特徴は、こうした心理教育グループの実施には適していると言えるでしょう。

こうした心理教育グループでは、トラウマ性体験が子どもに与える心理的影響を扱ったり、あるいは大切な人の喪失がどのような心理的影響をもたらすかなど、さまざまなテーマを扱うことができます。

(6)症状が継続している子どもへの援助

災害に遭遇した子どものほとんどは、これまで述べてきたケアによって、それに要する時間に長短はあっても、次第に災害の影響から回復してくるものです。しかし、中には、当初の症状が長期にわたって継続してしまう子どもがいることも事実です。災害時の被害の強度、災害による喪失体験の有無(たとえば、家族の被災の状況や親の死亡など)、災害以前のトラウマ体験の有無やその程度(たとえば施設に入所する以前の家庭での虐待やその程度など)などが、被災体験に対する子どもの反応の長期化や複雑化に影響すると考えられます。

悪夢、夜驚、夜尿、分離不安、退行(赤ちゃん返り)、情緒的混乱やいわゆるパニック、フラッシュバック用の反応、災害時の恐怖や絶望感の訴えの繰り返し、過敏性や驚愕反応、入眠困難や途中覚醒、イライラや怒りっぽさ、落ち着きなさや多動性などの状態が、災害直後の混乱がある程度収束した後の1か月から6か月後になっても改善してこない場合や新たに強い症状として出現した場合には、個人的な心理療法が必要である可能性がありますので、小児精神科や子どもを専門とする心理士などの専門家に相談することをお勧めいたします。

(7)保護者から虐待を受けていた子どもがその保護者を失った場合

(「6。家族を亡くした子どもへの対応」も参照してください)

親を失うという体験は、それ一つをとっても子どもにとって非常に重大な影響をもたらします。その親が、虐待やネグレクトなどの不適切な養育をしていた場合、子どもの反応はより複雑になるため、心理的ケアは欠かせません。

一般的に、トラウマ体験と喪失体験が重なった子どもの心理的回復は、まずトラウマ体験を扱って一定の整理ができたのち、喪失に対する反応が適切に起こると考えられています。つまり、虐待やネグレクトなどの不適切な養育がいわゆるトラウマとなっている子どもの心理的ケアに関しては、まず、その体験を整理し(たとえば、親に叩かれたときの考えや気持ちを表現するなど)、それによって、親に対する怒りや、施設に入らなければならなかったことへの悲しみがある程度整理できた段階で、今度は、その親を失ってしまった体験を扱うことになります。

この経過をたどることは、子どもにかなりの心理的負担を与える可能性があります。そのため、心理的ケアが成り立つためには、子どもに寄り添うケアワーカーの存在が非常に重要な意味を持つことになります。ケアワーカーが、子どもにとって安心感を与えてくれる存在であり、子どもが不安定になったときに頼れる存在であることが、こうした心理的ケアを行う上でもっとも重要な前提条件になるのです。

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