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次回学術集会

「第26回いしかわ金沢大会」

第26回いしかわ金沢大会

↑リーフレット (ダウンロード用) (12.25更新)

会期:2020年11月28日~29日
会場:金沢歌劇座ほか
大会ホームページ

次々回学術集会

「第27回かながわ大会(仮称)」

会期:2021年12月4~5日
会場:パシフィコ横浜

家族を亡くす事は子どもにとって最も大きな出来事です。施設にいて離れて暮らしていたとしても、子どもにとっての衝撃は強いと考えましょう。もし、施設にそのようなお子さんがおられたら、十分なケアが必要です。

(1)事実をどう伝えるか

ア.いつ、誰が伝えるか?

亡くなったという事実が明らかになった時には、あまり遅くなることなく伝えることが望まれますが、しっかりと向き合って伝えなければなりません。通常では、施設との十分な連携のもと、児童相談所の担当者が伝えることが多いと思われますが、災害の場合には様々な制約もあるでしょう。また、残された家族が自分たちで子どもに伝えたいと望む時もあるでしょう。子どもと児童相談所の関係、子どもと残された家族との関係、ケアワーカーとの関係などを総合的に考えて、判断する必要があります。

ただし、必ず担当のケアワーカーがサポートする必要がありますので、担当のケアワーカーは子どもと一緒にその話を聞いてサポートしましょう。

イ.どのように伝えるか?

「大事なお話がある」と告げ、他の子どもがいないところで、説明する人、子ども、担当ケアワーカーで話をしましょう。あまり大人が多すぎると圧迫感があって自分を表現できない危険もありますが、担当ケアワーカーは必ず子どもと同席すべきです。幼児や小学校低学年の子どもの場合は担当ケアワーカーが膝の上に乗せたり、すぐに手を握ることができる位置に座りましょう。

その上で、説明する人は、子どもの目線に合わせて、亡くなった事実、その他分かっている事実を子どもに理解しやすい言葉で伝える必要があります。最初から理解できないからと余りに婉曲に伝えようとすると伝わりません。子どもの理解の状況を確かめながら話しましょう。子どもからの質問も聞き、後で聞きたいことがあったらいつでも答えることを告げましょう。

その場での子どもの反応は様々です。何も感じていないようにふるまう子どもさえ少なくありません。しかし、衝撃を受けていない子どもはいません。子どもに対する共感性が最も必要となる場面です。

ウ.伝えた後に

大人は激励のつもりで自分の考えを子どもに押し付けがちです。しかし、上から目線の言葉、例えば、「亡くなった人の分も生きなさい」「もっといい子にならないとね」「がんばりなさい」などの言葉は子どもにとって決して温かい言葉ではありません。また、一般的につかわれる「お星様になって見守っていてくれる」などは子どもによっては怖い表現になる危険もあります。例えば虐待を受けた子どもなどは「見張られている」と感じるかもしれません。

子どもが涙を流せるなら、それはとても大切な時間です。抱いたり、手を握ったりしながら十分に泣かせてあげましょう。泣かない子どももいます。それは決して薄情なのではなく、どうしていいかわからないのです。親から「泣くな」と言われることが多かったので泣けないという子どももいます。すべての子どもの気持ちを大切にして受け入れましょう。そして、泣いても良いことを伝えましょう。

子どもが怒りを表現するとしたら、それも自然なことです。「頭に来るね」と共感して、その怒りの表現を受け入れましょう。子どもは時として周囲が予想しない行動をしたり表現をすることがありますが、寄り添うことが最も大切です。

エ.他の子どもへの伝え方

他の子どもにどのように伝えるかはできるだけその子どもと話しましょう。自分から伝えたいという子どももいるでしょうし、ケアワーカーに伝えてほしいと思っている子どももいます。子どもが伝える時も、必ずケアワーカーが同席しましょう。他の子どもがその事実をどのように理解したかを確認することも意味があります。子どもが他の子どもに伝えて欲しくないと訴えた時には、他の子どもに秘密にしておくことの難しさなどを粘り強く説明して、子どもが納得してから他の子どもに説明しましょう。

(2)家族が行方不明の場合の対応

「行方不明」という事実も伝えるべきです。伝え方は亡くなった時と大きくはかわりません。その言葉を、その子どもがどのように理解をしているのかを、語り合うことも必要です。「行方不明というのはどういうことだと思っている?」などと尋ねて返ってくる答えを正面から受け止めてあげる必要があります。とても漠然と、あるいは空想的にとらえている子どももいれば、大人同様の現実感をもって事実をとらえている子どももいます。まずはその子のとらえ方を尊重しましょう。ただし、「津波にさらわれたけど、南の島にたどりついてそこで元気で暮らしている」など、余りにも現実離れしたとらえ方を信じ切っているような場合には、衝撃にならない程度の修正をした方が、現実生活には適応的であると思われます。

その後、生きていてほしいという気持ちと、もう亡くなっているのではないかという気持ちが混同してくることもあります。また、亡くなっているかもしれないと思うこと自体に罪悪感を持つこともあるでしょう。はっきりと亡くなったという場合以上に精神的には負担になることも決して少なくありません。支えることが必要です。

ご遺体は見つからなくても、ご家族やご親戚が亡くなったことを認める決断をされた時には「亡くなった」として上記のように伝えることが必要です。

(3)一般的なケア

ア.大人が目配りをする

子どもが必要とした時に必ず誰かがそばにいることが重要です。時々、「大丈夫?」と声をかけ、「あなたのそばにいるよ」というメッセージとしましょう。また、どのような反応があるかを感じてそれに対応するためには、目を配ることが必要です。普段よりも丁寧なかかわりを心がけてください。スキンシップも役立つことがあります。

イ.支援者の安定と一定性の確保

子どもにとって最もつらい時です。そのような時には子どもにとって最も信頼できる担当ケアワーカーが必要なのです。担当者を変えることはできるだけ避けましょう。

ウ.泣ける場所の提供

特に年長の子どもでは、一人で泣けるような場所も大切です。施設は静かになれる場所が決して多いところではありません。子どもによってはトイレで泣くこともあります。職員の部屋や会議室などを提供して、声を出して泣くチャンスを与えることも意味があります。

エ.セレモニー

お葬式に参加ができる状況であれば、参加することは決して悪いことではありません。しかし、子どもが怖がる時には無理に参加させる必要はありません。また、参加する時も一人ではなく、ケアワーカーも一緒に参列する方がよいと考えられます。家族や親戚の言動によって子どもが傷つくことを防ぎ、その時のことを後に共有することができるからです。お葬式に参加しない時にはもちろん、参加した際にも、施設で何らかのセレモニーを行ったり、写真を用意して飾って簡単な仏壇や祭壇とし、お線香を立てたり、祈るなどをケアワーカーと一緒にすることが必要です。子どもが拒否した時には、ケアワーカーだけでも祈ることを続けましょう。社会的養護の場にいる子どもは、日常的に家族と離れているだけに死を受け入れることが難しいので、このような対策は不可欠です。

オ.親の思い出に品物の入手と整理

子どもが亡くなった親を思い出せるような品物をもつことは大切です。親の匂いを思い出せるハンカチなどがあればよいでしょうが、そうでなくても何らかの思い出の品物が必要であることを、残された家族に伝えて手に入れるように努力しましょう。

そのような品物や、子どもの持っている写真を整理しながら、子どもの思い出に耳を傾けることはとても重要です。しかし、すぐにはできないかもしれません。焦らずにタイミングを計りましょう。

(4)子どもの「死」の理解と説明

子どもがどの程度「死」を理解できているかは発達段階とこれまでに死の場面にどのように出会ってきたかによって異なります。一般に、4歳以降には「死」ということをある程度理解しますが、幼児期にはあっちの世界に会いに行って戻って来られると思っていたり、再生できると思っていたりすることもあります。小学生ぐらいの年齢になると、生きているものは死ぬ可能性があることは理解しますが、死が全ての人に起きることであることを理解することは難しいものです。中学生以降には、たいていの子どもは大人と同じように、「死」は生き物として永久に生命活動を失うことであると理解していますが、なかには十分に理解できない子どもいます。

その子どもだけではなく、他の子どもも含めて、子どもが「死」に関して質問してきたら、魂は別の世界に行って戻ってこないこと、心の中に思い出として生きているが会いには行けないこと、身体は土にかえることなどをその子どもの発達段階にあった形で説明しましょう。できる時には、子どもの育った家庭の宗教や文化を考えて説明に織り込むとよいでしょう。

大人も「死」を語ることは避けたいものです。しかし、大人が避ければ、子どもは表現する機会を失います。ごまかさずに、誠実に向き合って答えましょう。

(5)初期にみられる子どもの反応とそれへの対応

ア.混乱

子どもは自分には処理できない衝撃的な出来事に混乱することは当然です。施設に入所しているお子さんは、守られている安心感が少ないだけに混乱が著明になる危険性があります。叱るのではなく、「どうしていいかわからなくなるよね」などの声かけをしましょう。

イ.怒り

怒りを持つのは当然です。「どうして自分が?」という気持ちが大きいことも当然です。いらいらしたり、当たり散らす時期もあるでしょう。他の子どもを傷つける危険がある時などは行動の制限が必要ですが、感情は受け入れる必要があります。行動ではなく言葉で表現するように導きましょう。

ウ.喪失感

施設で暮らしていても、多くの子どもたちは自分の本来の生活の場は家庭であり、施設の生活は仮のものだと思っています。親が亡くなった時には「帰る場所」がなくなってしまうのですから、自分の存在自体が失われるような強い喪失感が出現することもあります。こうした子どもの喪失感は、初期には当然なこととして受け入れましょう。

エ.なかったことにする

もう一つ、子どもによくみられるのは何もなかったようにふるまうことです。特に、施設で生活しているお子さんは、親族の死を直接目撃にしておらず、受け入れられないことも多いと考えられます。無理に認めさせる必要はありませんが、この状態が長期にわたることは決して良いことではありません。徐々に受け入れられるための支援が必要です。

オ.赤ちゃん返りや分離不安

赤ちゃん返りをしたり、一人になることを不安がってケアワーカーの後をついて回ることもあります。こうした行為は子どもが安心感を得ようとするためのものですので、叱るのではなく、スキンシップなど、丁寧な対応を心がけましょう。

カ.自分のせいにする

一般的に子どもは「死」の原因を自分に引き付けて考えることが多いものです。例えば、「昔、お父さんから怒られた時に『お父さんなんか死ねばいい』と自分が思ったからお父さんが死んでしまった」と思う子どもも少なくありません。また、「自分が施設に来て親を見捨ててしまったから、親が死んでしまった」と思う危険もあります。それを外に表現せずにいらいらしたり、引きこもったり、自暴自棄の行動をしたり、中には自傷に至ることもあります。従って、「死」はあなたのせいではないことを伝えておくことは必要なことなのです。

キ.その他の罪悪感

施設に入所しているお子さんは、自分が一緒にいられなかったということに強い罪悪感を抱く危険性があります。比較的年齢が高いお子さんは自分が親をケアしなくてはいけないと思っていることも少なくありません。「あなたは悪くない」というメッセージが役に立ちます。

ク.亡くなった人になったように行動する

まるで、自分が亡くなった人であるかのように振舞う子どももいます。亡くなった人が虐待をした人の場合、同じような乱暴な行動が始まったり、亡くなった人のような声を出したりすることは少なくないと考えられます。子どもが自分自身を取り戻すように、「亡くなった人」の話をして、客観視できるように支援しましょう。それでも、こうした振る舞いが続く時には専門家に相談しましょう

ケ.亡くなった人の命令を聞いたり、恐怖を感じる

大切な人を失った後にその人の声を聞くということは時折みられます。しかし、亡くなった人が自分を虐待した人であったり、強い支配者であった場合には、昔言われていたことを「聞いて」その命令に従おうとすることもあります。さらに、子どもの中には、現実に別のところで生きている加害者がいなくなることで、加害者が自分のそばに来るのではという恐怖が高まることもあります。そのようなことに気づいたら、専門家に相談しましょう。

コ.亡くなった人を理想化する

亡くなった人を理想化することは通常でもよくあることです。しかし、施設で生活している子どもにとって、理想化が過度になると、現実の親像を認めることができず、将来に影響する危険性もあります。子どもの理想化を否定するのではなく、それを受け入れつつ、徐々に現実的な話をしていきましょう。

サ.虐待傾向のあった親の喪失

これまで述べてきたように、子どもにとって、親を失うことはとても重大な体験です。さらに、施設で生活している子どもにとって、親の喪失がより深刻かつ複雑な反応を生じる可能性があります。それは、施設に入所している子どもが、以前の家庭生活で虐待やネグレクトなどの不適切な養育を受けていた場合に顕著になります。

子どもにとって、親は、怒りの対象であると同時に求めている相手でもあるということは多いものです。こうした怒りの対象である親を失うことによって、子どもは怒りの持って行き場がなくなるかもしれません。また、こうした怒りが親を死なせてしまったと考えるかもしれません。さらに、いつかは自分の方に向いてくれると求め続けた相手から決定的な見捨てられた体験として捉えるかもしれません。

また、これまで説明したように、亡くなった親のようにふるまったり、亡くなった親の命令に従おうとしたり、近くに来ているように感じられて怖くなったりする可能性もあります。

このように、虐待やネグレクトを受けてきた子どもにとって、親の死は、通常以上に複雑で深刻な反応を生む可能性があるのです。リスクの高い状況を考えて、できるだけ心理士などの専門家の支援を得て下さい。

(6)中長期的な影響

初期には当たり前の反応でも、それが長期にわたることは問題です。また、初期には何も反応を見せていなかった子どもがある程度時間がたってからうつ状態になったり引きこもったりすることもあります。2~3か月以上たってもこれまで述べてきたような反応が改善してこない場合や新たに強い症状が出現した場合には専門家への相談が必要です。

特に、虐待やネグレクトで入所しているお子さんの場合にはそのトラウマからの回復に大きな影響を与えることがあります。初期から長期的な視点での専門的支援が必要です。

(7)命日反応

命日に混乱を見せたり、不安が強くなったり、落ち込んだり、様々な反応があらわれることがあります。一般にはその時期を超えるとおさまりますが、命日にはケアワーカーの支援のもとにお線香をあげる、お祈りするなどのセレモニーが必要です。

(8)家族以外の喪失体験

大人でも自分の故郷を失った時には強い喪失感を感じます。自分が住んでいた所を失くすことは、子どもにとっては大きな喪失体験となります。しばらくたって、落ち着いた段階で、ケアワーカーの支援のもと、自分の故郷を訪ねる機会を持つこともよいでしょう。混乱したり、落ち込んだりする可能性もありますが、ケアワーカーの支援のあるうちに体験しておく方が、子どもにとって安全です。

(9)最後に

大切な人を失った子どもの反応に関しての研究は少なからずありますが、施設に入所されているお子さんの場合の研究はほとんどないのが現状です。家庭にいるお子さんの知見をもとに、これまでの経験を加えて、作成しました。しかし、予期せぬことも起こる可能性があります。一人で悩まずに相談してください。

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